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断れないのは意志が弱いからではありません
仕事の退勤間際、同僚から「これ、明日までにお願いできる?」と急ぎの仕事を差し出される。
本当はその後に楽しみにしていた映画の予定があったり、心身ともに疲れ果てて早く帰りたかったりするのに、口をついて出たのは「あ、大丈夫ですよ!」という明るい返事。
結局、自分の予定をキャンセルして残業を引き受け、誰もいなくなった静かな帰り道で「どうして私はまた断れなかったんだろう」と、どっと押し寄せる疲労感と自己嫌悪に包まれてしまう。
そんな経験はありませんか。
いつもはっきり言えずに引き受けてしまう自分に対して、気の弱さや優柔不断さを責めてしまう人はとても多いです。
けれど、あなたが断れないのは意志が弱いからではありません。
その奥には、相手をがっかりさせたくないという温かい配慮や、職場の波風を立てたくないという優しい気遣いがあるのですね。
あなたは自分勝手な人ではなく、ずっと周囲に気を配り、調和を大切にしてきた人なのです。
優しさが自己犠牲になると苦しさに変わる
誰かをサポートし、思いやりを持つことは素晴らしいことです。
けれど、毎回のように自分自身を後回しにし、我慢することで成り立つ優しさは、やがてあなたの心を内側から削り取っていきます。
断ることに罪悪感を抱き、引き受けることで自分が擦り減る。
この苦しいループを繰り返していると、時間の余裕だけでなく、心の中の元気まで少しずつ消えていってしまいます。
特に周囲からは「いつも機嫌がよくて頼れる人」に見えやすいため、あなたのしんどさは外側からは気付かれにくいのも辛いところです。
断れない人は境界線を教わってこなかっただけ
自分の心と体を守りながら他者と接するためには、「ここまではできるけれど、これ以上は無理」という心の境界線が必要です。
しかし、ずっと他人に合わせて生きてきた人は、この境界線を感じるよりも前に、反射的に相手の要望を優先する癖がついてしまっているのですね。
自分の予定や疲れ具合を確認する前に、相手の期待にどう応えるかを先に考えてしまうのです。
だからこそ、必要なのは性格をガラリと変えることではありません。
境界線という「心を守る防壁」を、日常の中で少しずつ意識していくことです。
これをスマートフォンに例えるなら、あなたは自分のバッテリーを惜しみなく周りに分け与えるモバイルバッテリーのような状態です。
誰かのバッテリー切れを助けるために、テザリングや給電をし続けていたら、やがてあなたのスマートフォンの電源が切れてしまい、あなた自身が動けなくなってしまいます。
まずは自分の充電パーセンテージをしっかりと確保することが、長い目で見て周囲を大切にすることにもつながるのです。
最初は小さな保留の一言で大丈夫です
断る練習の第一歩として、いきなり強い言葉で「できません」と言う必要はまったくありません。
何かをお願いされたら、その場ですぐに返事をせず、「少しスケジュールを確認しますので、3分ほどお時間をいただいてもいいですか」と伝えてみてください。
その場から一度物理的に離れたり、一呼吸置いたりして、自分の予定と体力を確認する。
この「3分間の保留」という間を挟むだけで、反射的な「はい」を大幅に減らすことができます。
もし引き受けるのが難しいと判断したなら、「確認しましたが、あいにく今回は予定の調整が難しく、お引き受けできません」と、理由を長々と説明せずに事実だけをシンプルに伝えれば十分です。
断ることは、相手を拒絶し否定することではなく、今の自分のキャパシティを誠実に伝える行為です。
あなたのバッテリーを大切に守りながら、持続可能な優しさを周りに届けていけるといいですね。